「ママー、なんかブルーはいってる~。なんか性格崩壊してない?」
そうなんですよ、夏休み最後の昨日は、漠然としたイヤイヤ感につつまれて不元気な母でした。
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先日、実家に泊まっていたときのこと。
娘の夏休みの宿題に、
”おじいちゃんおばあちゃんに戦争体験を聞く”
(ただし、話したがらないようだったら無理に聞かないこと)
というのがあった。
実家で娘が聞きにくそうにしていたので一緒に聞いた。
終戦時、父は5歳で戦時中のことはあまり覚えてないようだったけれど、
それでも、これまで、当時のことを積極的に話したがらなかった。
「でも、やっぱり次の世代にもこういう話は伝えておかないと!」
と、私が冗談めかして言うと、少しずつ(それも事務的に)話してくれた。
父の戦中戦後のことは
前にも少し書いているけど、やっぱり書き残しておこう。
終戦前夜、8月14日、B29による仙台空襲があった。
(これまで空襲がこの日だったことを私は知らなかった。)
焼夷弾が落とされた。
父の住んでいた北4番町にも落とされた。
焼夷弾は父の家の台所に落ちた。
焼夷弾は爆発力というより、火事から火の海を作る力をもつのだという。
あたり一面は火事になり、まわりの家はほとんど焼けた。
「防空壕へ逃げたの?」
「いや最初は防空壕へ逃げたけど、すぐに出て、裏の山へ登った。
火事で防空壕に逃げると、逆に死んでしまう。
入ったままの人は蒸し焼きになって死んだよ。」
家が全て焼けたため、その後父たちは祖母方の実家へ身を寄せる。
そこで、祖母(父の母)は近くの男性と再婚をした。
結婚は好きだからかどうだったかは分からない。
「当時の田舎じゃ、女の人が一人で生きてはいけなかったんだよ。」
「戦争が終わって3年くらいは食べるものがなかった。よく道端の草を食べていたんだ。」
父の本当の父は、父が一歳の時に戦死した。
父の兄(おじ)とは顔が似ている。
おじと父の父親たちは兄弟だった(父の父のほうがお兄さん)。
おじの父も戦場で死んでいる。
祖母の3回目の結婚相手には連れ子がいた。
その後、妹たち(私のおばたち)も生まれている。
父とおじは、苗字を変えなかった。(お、あんたと同じだね、と娘にちゃちゃを入れる母)
戦死した遺族には国からお金がもらえたという理由もあったそうだ。
だから父の血のつながりのいろいろな兄弟姉妹たちはたくさんいて
付き合いの濃度もいろいろだった。
今でも私は、父の兄弟姉妹が何人いるのか、よく分からない。
祖母の結婚相手は、祖母と父の兄(私のおじ)夫婦とずっと暮らしていたけれど(表札は2つ)、
晩年はアル中となり、おじ夫婦とはうまくいっていなかったようだ。
祖母が亡くなってから、骨が他の親戚へ引き取られた。
祖母たちは、一番長く連れ添った夫婦は、一緒のお墓に入っていない。
父とおじの家の墓に祖母は眠る。
祖母にも物語があったはずだ。
どんなことを想いながら戦時中、戦後と生きたのだろうか。
静かな人であった。
最後までよく本を読んでいた。
父は戦争中戦後の話をほとんどしない。
当然、つらかったとか苦労したとかの言葉も聞いた事は無い。
生きて苦労するということではなく、
生きると死ぬことの境目には形容詞を当てはめることができないのかもしれない。
もちろん、そうなのかそうではないのか私は分からない。想像もできない。
「それにしても、明日には戦争が終わるって言う時に、駄目押しのような空襲だよね。
あと2日無事だったら、おじいちゃんの家も焼けなくて済んだのかもしれないのに。
でももし、そうだったらね、私達だって生まれて無かったんだね。」
そう、娘と話した。
たくさんの死を踏んで私達はいる。
そんなことは、理屈じゃ分かってるけど、理屈じゃなく分かった。
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夜、BSで「ゲゲゲの女房」を見ていたら、
水木しげるが戦地で死を向かい合っている場面をしげるの母が夢に見て、
しげるの両親が、「名まえをよぶんだ。」「しげるー」と叫ぶ場面があった。
娘はその姿を滑稽だと思ったのか照れたのか、笑ったが、私は笑えなかった。
生きてる私達は、生きてることを楽しいと思えてよかった。
今、両親が子供の死を心配して叫ぶような国じゃなくてよかった。
これからもそうだといいと思った。
朝の連ドラを見て(見たのは夜だけど)、父の話を思い出したりして
仕事がさ、漠然とイヤイヤとか思うのはそれって幸せなことだよね、
ってことで、まずは会社に行って目の前のタスクをとりあえず一個一個片付けることにするよ。
今日も元気だ、ご飯がおいしい。ありがとう。
本日の夜。amazonから荷物。
「うへー。かあさん、あんたは洗剤までamazonで買うのか。おもしろいヤツだよ、かあさん。」
ああ、スーパーへ寄る時間が無くって買えなくって、そしてついでがあったもんだから。
ああ、平和な言い分けだ。
平和な時間だ。
ずっと続きますように。