2010年8月18日水曜日

乙女の密告

京都の大学で、『アンネの日記』を教材にドイツ語を学ぶ乙女たちがバッハマン教授のもと、スピーチコンテストに向け、「一九四 四年四月九日、日曜日の夜」の暗記に励む。第143 回芥川賞受賞、とのこと。  

やたらとこの本の広告が目に付いて、そのうち読まねばならぬような錯覚に陥る。
1時間ちょっとあれば読み終わる。

乙女たち(私は女の子たちと呼んでいる)の総体は、遠くにあるとその輪郭が見えるが
近づいて掴もうとするとたちまち見えなくなる。一時の虹のようなものかもしれない。
若いころ、私はその輪郭を遠巻きにしては、怖がっていたものだ。
怖がっていたものとは、たとえば、この本ではこう書かれる。

乙女の言葉は決して真実を語らない。乙女は美しいメタファーを愛する。”

怖がりながら、からめとられながら、私は、密告してきたのだ。自分を。
そして、そうするうちに私は言葉と私の名前を取り戻してきたのかもしれない。

そんなことを考えた。




乙女の密告







バッハマン教授の好きな言葉は「血を吐いてください」だそうだ。
京都の家の中は暗い。冷蔵庫を開けたときの明るさが最も明るい、という部分がなぜか印象的。






読み終わって、ああ、この手の本は文庫本の薄いぺなぺなの紙に小さい文字で読みたいなと思った。演劇っぽい。素材をぎゅっと固めたような。


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朝ごはんを食べながら、娘が聞く。
「女性は親の承諾があれば16歳になったら結婚できるんだよね。男性は18歳でしょう。」
テレビを見ながらそんな会話を経由して、
「女の子はさ男の子より早くに大人になるよね。」と娘。
「そうねえ、そして男子はいつまでたっても子供だよね、Gさん。」と母。
わははとうなずくGさん。

娘が興味深げに聞く。
「恋愛するなら2つ上くらいでちょうどいい?どれくらいの年齢になったら大人になるの男の子は?」

G 「いやいくつって、人によってちがうよ。同い年でも年下でも、大人なヤツはいるしね。」
母 「それに先入観があるでしょう。年上、年下って。男の子は年下に対して大人ぶるしね~。」
G 「恋愛なんで病気だよ。本能、脳にだまされてるんだよ。」
母 「でもだまされるくらいじゃないと、生殖行動とかできないよ。」

朝からミもフタも無い話だよ。

「ううー。分かるけど、なんかなあ、そんな風に考えるの、ママはさ、ある意味かわいそう。」

と娘は母に対して言うが。

大丈夫だよ。
分かってても陥ってしまうのが恋愛というものだよ、アケチ君。(^^)v


自意識を大きく育てつつ、”女の子(乙女)たち”の集団にからまりながら、または外れながら
自分と他者の間を隔てるすべを習得していく、それが女の子たちなのかもしれない。
他者の間から自分の名前を取り戻す、言葉を思い出す、自分を取り戻す
そんなことが大人になっていくってことなのかもしれないね。

女の子が早くに大人になるっていわれるのはこのプロセスに起因してるのかねえ。
男の子になったことがないから分かんないけれどね。






2 件のコメント:

  1. なかなか興味深い話題ですね。
    またお会いしたいです、ディープなお話とおいしいお食事で。

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  2. ricoさま。

    はずかしげもなくこんな話をしています。
    Gさんがうらやましがるので、機会があったら
    こんどはうちにも遊びに来てください~。

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