2011年2月23日水曜日

戦略不全の論理

前に読んだ本にあまりにも頷く部分が多くて、つい同じ筆者の本を購入。

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膨大なデータを鮮やかに可視化しその意味を読み取っていく。その語りの手法にどきどきしながら読んだ。まるで戦後企業史についての歴史ミステリのようだった。しかしこれは経営戦略の本、そして作り話ではなく、本当の話だ。
本書では、企業の戦略について演繹法(経済モデル)と帰納法から俯瞰し、あわせて各モデルの有効性と限界も示す。この両方法を補って使うことにより企業の成長について説明がつく、ということである。過去のデータから証拠をすくい取りながら企業の成長の謎をひとつひとつ解いていく。

筆者が言うには、多くのデータを処理していった結果、「企業は事業立地で決まる」という戦略のテーゼが見えてくるということだ。「事業立地」とは、“誰”に“何”を売るかというフィールドのことで、そしてその方向付けをする経営者(管理者ではない)に必要なものは「事業観」であるという。「事業立地」が時代と合致しない場合は、大胆に立地転換(撤退)しない限り将来はない。不毛な立地をいくら耕しても作物は育たないということだ。

経営観は実学を学んだから身につくわけではなく、リベラル・アーツを含めた幅の広い見方が必要だという。

戦略の実行には長期的な観点が必要であり、確信命題を持った経営人材が10年、20年と取り組めることが必要であるとしている。日本のように、2,3年で経営者が変わっていては、方針を立てても刈り取りも見られないから大きな転換も図れない。つまりはdo nothing(様子見)に終わるのだという。
よって、戦後の企業の売り上げ拡大に反比例した利益率の低下(本の表紙にもなっている)の現実がある。



あんまりにも納得が多すぎて、前に読んだ本を職場の人に薦めたら、
「ボクも週末、問いなおしちゃいましたよ。うなづきすぎちゃいましたね。
そして最後まで読むと無力感がおそってきましたよ。」

...だよね。
企業も年をとる。若い頃の成長目覚しい企業と比べて成長停滞してくるのだ。
このまま生ける屍となるのか、別の若木が育ってくるのか...

これからの世代、第2幕に対しての希望も少しだけ提示されていたが、今の日本企業の人事システムが自らを変えてゆくことができるのだろうか。
最近、娘に、留学ってゆーのもありかもねー、とか言ってしまう...。


戦略不全の論理―慢性的な低収益の病からどう抜け出すか















(ちょっと興味深かったので、メモ)
「モティベーションが高ければパフォーマンスも高い。だからマネジメントはモティベーションをあげる必要がある。これは一般的な観察として広く支持されている命題、すなわち定理である。ところがこれはよくある間違いで相関関係と因果関係とを取り違えている。モティベーションは必要条件であっても十分条件ではない。しかもパフォーマンスが高ければモティベーションも上がるという具合に逆の因果が働いている。さらに言えばパフォーマンスを直接作用する第三の変数オペレーションズ・マネージメントの施策が背後にあり、これがモティベーションも同じ方向に直接左右するのである。」

トヨタは効率の権化のように言われているが、そうではなく利益をとって効率を捨てているのだ、の例も面白かった。

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