2011年1月25日火曜日

価値を測るものさし

昼休み。
「ひとつ気がついたことがあるんですけど。」
おお、なんかひさしぶりじゃないか、T君。
「飲み会で、立替すると、お金持ち.....。 今、なんだかそんな気持ちですわ。
それはですね、このお金持ち感は、事象が4次元だからなんですよ。
時間軸があるからですね!」

んなわけないだろー、なんてこと誰も言わず、
しかし疲れた頭でこじゃれた落ちをつける人々もいない昼休み。


そうね、私(たちは)日々、数値化、可視化なのである。
そして閾値を判断。定性的だと、いただけないような雰囲気なのだ。
それだけでは意味の無い膨大な数値データを
Excelのセルにせっせと詰めこみ、意味を見出そうとする毎日。
時間を惜しんでやらないと早く帰れない。 おしゃべりも時々したいんだけどね。
しかし夜遅くまで働くみなさん(ご苦労様です)、知ってますか、
季節ごとの外の空気の匂いとか帰宅するときの夕日の色や夜の色の変化を。
私ばっかり眺めちゃってすみません。

時々、ネットで内田樹の研究室のぞく。
そうすると日々数字をつないで線を引いている自分の血管に、たおやかさがしみこんでくる気持ちになる。(どんな研究をされているのかはまるで分かっておらず、ただただ言葉を読むのみです。インターネットの恩恵でですね。)
内田先生が21年間勤めた神戸女学院大学の最終講義の内容もネット上のあちこちで見かける。
その最終講義では、
ヴォーリズの「学校設計の思想」と、ヴォーリズ設計の建物について語り、 93年当時に学校の財政難に際して某シンクタンクに意見を求めた際、「地価が高いうちにこの土地を売って、郊外に移転すべし。築60年の建物には維持費がかかるだけで無価値だ」という結論が出た時に激怒し、このヴォーリズの建物の価値、そこで学 ぶことの 意味ををまるで理解できず、数値化できるものしか信じない市場原理主義とは、私はそのときに決別した、
という話が印象に残ったとされている方が多い。共感されたという方も。
大学のHPにも書かれている。


この部分に、なんとなくざわつく。このざわつきはなんだろう。

”数値化できるものしか信じない市場原理主義との決別”という響きはとても心地よい。また価値というものに関しては数字で測ることのできないものもあるし、経済ではない空気や時間やにおい的なアナログ的な価値観を基準にできたらなとも私も思う。
(確かに、歴史ある建築の趣を残してほしいと思うし古い校舎を残している学校を見学したことがありますが、その空間にはほんと癒されます。)

一方で、数値化しないと分からないこともあるし、特に市場では、市場原理で数値化し切り捨てをしないと価値を得られないモノや人もいるのだ。もちろん最大公約的な幸せはないし、幸せと感は個人的なものだ。価値を測るには、いろいろなものさしがある。(それらのものさしは日々増やしていくことも可能だし、それは楽しい作業でもある。)
そして、どこに価値基準を置くかを、そのときそのときによって私たちは選ぶことができる。
思うに、選ぶって、傲慢だ。私たちは傲慢な生き物なのだ、最近忘れてたけど。

そして自分の価値基準を持ち選択できる場所へ到達するためには、やはり市場原理の中である程度の経済的安定を得られないととなかなか難しいことも実感としてある。まず自分を保てるだけの経済基盤ががあって、価値基準なるものを考え選ぶ傲慢さがもてる余裕もでてくると思うのだ。モノで構成されている現実の中で泳ぎ、自分自身を保つのは意外とキビシイ。

だから、内田先生のようにきっぱりと”私は決別した”と言って価値基準を選び取る(それが可能である)ことをうらやんでしまう。きっぱりと選択できる(他方を捨てる)ことができる強さや傲慢さをうらやむ。
私は、いつもどっちがいいのか、とか損か得かを比較して選択しあぐねて右往左往してしまう。
霞を食べて生きていけたらいいねえ。

そうか。
そこへ向かう努力を怠った(思いつきもしなかったのだが)、今でも怠ってぬるま湯でゆるゆるしている自分自身を再確認して、うなだれるのだ。きっぱりとした傲慢さの前に自分の怠慢さを感じて、ざわざわと感じて、うなだれる。

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そういえば、「経営戦略を問いなおす」を書かれた三品先生も、
損得が横行する経営市場における経営においても、経営は人に宿るものであり、ゆえに経営者が若い頃に学ぶべきことは役に立つことだけではなくリベラル・アーツの分野、ものの考え方、人間的価値基準の土台作り、という。

価値基準の持ち方、中学から大学まで、このあたりの影響はとても大きいと思う。

さて、もう1月の末。2年前には面接も済んだ頃だったな。
中学受験の皆様、とにかく力を出し切れますように...と、念を送ります(むん)
...って、結局、昨日からこれが言いたかったのだけど、切り出すネタがなくて (^^ゞ

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