2011年12月11日日曜日

ハーモニー

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伊藤 計劃「虐殺器官」に続いて「ハーモニー」読了。

人類は21世紀後半、「大災禍」と呼ばれる世界的な混乱を経て健康管理社会を手に入れる。文化圏に住む人々は大人になる年齢に達すると、体内に分子レベルで健康状態を管理するナノロボットWatchMeをインストールする。人体に異常があれば、それが遺伝子レベルであっても、WatchMeがメディケア(個人用医療薬精製システム)と連携して分子レベルで治してしまう。誰も病気で病むことのない世界を実現したのだ。
その世界の中で、ただ意識や意思がいまだ社会システムか取り残されている。いや、かろうじて社会システムの中で「わたし」であることが残されている。

脳の報酬領域と意思決定、欲求モジュールの葛藤、ひとつの器官である脳の進化やヒトの機構メカニズムとの脳とのインターフェースなんかは、私がいつもぼんやりとだけれど考えてしまう領域である。恐怖のもとはどこか。死ぬまでになんとか折り合いをつけられないだろうか。とはいえ生きててこその感情。うまく付き合っていかれるようにいろんなことを知りたいな、と思うのだ、こんな本を読むと。
伊藤 計劃、2冊とも良かった。

本書は、冒頭から
<?Emotion-in-Text Markup Language:version = 1.2:encoding = EMO-590378?>
<!DOCTYPE etml PUBLIC :-//WENC//DTD ETML 1.2 transitional//EN>
<etml:lang = ja>
<body>
という具合にETML 1.2というマークアップ言語で書かれていて、その仕掛け、アイデアに、最後、おお。


ハーモニー



21世紀後半、「大災禍」と呼ばれる世界的な混乱を経て、人類は大規模な福祉厚生社会を築きあげていた。医療分子の発達で病気がほぼ放逐され、見せかけの優しさや倫理が横溢する“ユートピア”。そんな社会に倦んだ3人の少女は餓死することを選択した―それから13年。死ねなかった少女・霧慧トァンは、世界を襲う大混乱の陰にただひとり死んだはずの少女の影を見る―『虐殺器官』の著者が描く、ユートピアの臨界点。第30回日本SF大賞受賞、「ベストSF2009」第1位、第40回星雲賞日本長編部門受賞作。(amazonより)

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