会社の帰り、イイダさん夫妻にばったり出会う。
「そこのパン屋さんまで行く途中だったんですよ。」と、私。
「あら。今日は定休日よ。やっぱりお店の前でうなだれてる人、いたわよ。」
あああ。私もうなだれる。
「そういえばジビエの季節ですね。お店ではもう出してますか?」
イイダさんとイイダさんの出すお料理とはもう10年以上のお付き合いになる。
いつも気合の入ったごはんを食べさせてくれる。(シェフは別の方)
たとえば、塩の攻め方が好きだ。
たとえば、地味な色合いお皿からは想像しにくい食材の主張する味が好きだ。
だから、がつんというごはんが食べたい時に行く。
「もうイノシシと熊がありますよ。あとちょっとで鹿も入ってくると思います。食べにきてくださいよ。」
「いきたいです!! お肉は、甘いソースで?」
「そうです。チョコレートソースなんかでも食べますよ。」
ああああ。食べたい食べたい食べたい食べたい。
美味しいごはんを食べるのが好きだ。
高級な、とか珍しいものというわけでなく、野菜ひとつでもいいんだけど、
なんというか、きっちりと食材が主張する角張った味が好きだ。(そしてワインに合うやつ。)
食べた瞬間の、さざなみのようにひたひたと美味しさに血液が満たされる瞬間が好きだ。
その満ち満ちている自分(今思い出してみるに)、私、ちょっと変かなとも思うくらい好きだ。
(でもグルメというやつではない。素材にも料理法には詳しくないし。)
家に帰って、娘に言う。
「ああ、イイダさんとこでジビエがたべたいよう。今週とか行かない?」
「いいけど。12月に入ってからでもよくない?もうすぐテストなんだけど。」
「昼間やりなよ。勉強なんて。」(母、いつもと言ってることがちがーう。)
「えっとさ、家計的にはどうなの?」
「うーん、食費かかりすぎだけど...。でも行きたいよう。
なんとかして行けないかな。平日とか...ああ出張多すぎて無理かー。
8時くらいに帰ってきてから行くってのは?ああ、食べたいよう。一人ででも食べに行きたいよう。」
ほとんど駄々っ子である。母が。
実は、12月には他のお店にも鹿を食べる予約を入れていて、
女子会もあったり...いいのかこんなに食べてばっかりで(体型的・家計的に)。
こんなんだったら、先日のバーゲンで服を買わなきゃ良かった。
娘:「いいじゃん、全部12月でさ。」
母:「鹿をたべるのは?」
娘:「12月。」
母:「女子会は?」
娘:「12月」
母:「イイダさんとこは?」
娘:「12月。いいんじゃない年末ってことで。」
母:「...そうだね。全部12月にしようか。」
母はなんとか、気持ちを押さえ込んだ。
(でも、食べたい。)
今日は”好き”をたくさん書いたので気分、高揚。
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