2012年2月18日土曜日

火夜

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「火は全てを浄化するんだって。」
そういって春は、自分を含めた全てを浄化しようとした。
映画「重力ピエロ」がテレビでやってたので録画して見た。
ラスト近くで春が言うセリフだ。

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増田みず子は、学生のころ寄り添うように読んだ。
自分を重ね合わせるように、読んだ。
シングルセルを、決して交じり合わないが集まらないと機能しない細胞のひとつである自分を重ねて読んだ。
結婚してから、書くものの色合いが変わったように感じ、
あの尖った自分が寄り添える的確な言葉はどこへ言ったんだろうと思い、読まなくなっていった。

「火夜」は作者自身のことらしい。けれどどこまで本当のことかは分らない。
そんなレビューを読んで、とにかく読みたくなり、中古で買った。


火夜













けれどもそういった普遍的な家庭像というものが成立するためには、お互いの好意が前提条件として必要なのである。その根本のところが、この夫婦にはかけている。相手が必要なことを何もしてくれないのに、どうして自分だけが犠牲を払わなければならないのだろう、という疑問と不満のなかにこの夫婦はおぼれている。
人は好きでない相手といっしょに暮らすとき、自分が譲歩するより先に、相手に譲歩を求めるものである。

実感として理解できる部分である。
けれども、そういう夫婦のありようを書くということ自体、以前の文章とは違うなあと思う。
変化し続けるものだし、その一方で、変わらないものを望む自分もいるし。

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そういえば、増田みず子には「ふたつの春」もある。
この本を読み終わった日に、録画した「重力ピエロ」をみたのだけど、
この物語にも二人の春(spring)が登場する。

「重力ピエロ」の春の言う、「火には浄化作用があるんだって。」というセリフと、
「火夜」の火とが重なって感じられた。
フィクションなのかノンフィクションなのか、それは、もう私にとってはあまり重要ではなく、
この本で、増田みず子を再び読めて、なつかしくしみじみとした。

「火夜」の火によってもう書かなくなったのか、書く事の核がなくなったのか...。


今でも初期の作品は大好きです。

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