2011年11月30日水曜日

アダムの呪い

入院中に座りながら頭を下げて読む。首が痛くなるし疲れるので一日10分くらいずつ読む。
イヴの7人の娘たちの続編。

イヴの...ではミトコンドリアDNAに関する科学読み物だったが、この本はY染色体に関するエッセイ色強い科学読み物。前半部分のヒトの2つの性について、Y染色体(Y染色体は遺伝子のいわば墓場であるということ)、SRY遺伝子については、前にも何冊か読んでいるのでふんふんと読んでいた。
後半部からの男の発生率を高めるY遺伝子はあるのかという話、mtDNAとY染色体の勢力拡大の戦いの話を農耕社会の出現と絡めるあたりから面白くなってくる。もちろんこれは筆者の考えの域を出ないのだが。
最後に、Y染色体が組み換えで補修することも出来ず(X染色体は2組あるがYは1組なので補修されずそのまま受け継がれてゆく)このまま衰退していく、つまりは男性性の消滅に対してどうしたらよいのかという問題に対して筆者は過激な遺伝子的解決方法を提案している。男性性を放棄して卵細胞へ、精子ではなくほかの卵子の細胞核を注入して子孫をつなげていったらどうか、と。

理論的には分る。でももし、そういう世界に変化していったら、私たちが、今持っている「愛」のカタチも変わってゆくんだろう。文化や習慣も。しかし、男性性が消滅しても「男性に対する愛」の感情の痕跡は何万年も消えないんだろうなと思う。胸がきりりと痛むんだろう。
それまで地球上のヒトの営みが続いていたら、の話だけど。


アダムの呪い













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病院へ見舞いに来た娘が「夢十夜」の百合の花と女性の対比が「めっちゃいいのよー」と学校のノートをめくりながら身振り手ぶりで語り、母は今読んでる本でさ、「女性だけで子孫を作るってそりゃ理論的にはわかるけどさー、そしたら愛の形ってゆーのも変わってくると思うんだよね。」とアツく語った。
ナースステーションの前で母娘二人で手をひらひらさせている姿は、なにやら楽しげだったにちがいない。まちがいない。

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